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名古屋家庭裁判所 昭和40年(家イ)450号 審判 1965年9月08日

申立人 藤川幸子(仮名)

相手方 藤川一郎(仮名)

主文

申立人と相手方を離婚する。

相手方は、申立人に対し昭和四〇年九月一一日午前八時相手方宅に保管中の別紙目録記載の申立人所有物件全部を返還せよ。

理由

本件申立の実情は、申立人と相手方は、昭和三八年一一月三日結婚し、昭和三九年五月一一日婚姻届出をしたが、相手方は、精神病の気配があり、同居後時々異常が認められ、勤務を休み、弁当を持たせれば遊んで帰る状態で共同生活ができないので申立人は別居し、離婚の申立に及ぶというのである。相手方は、現在精神分裂症の病名で、海部郡○○○町○○病院に入院中のため、調停期日に出頭できないが、同病院において審問の結果によると、相手方は、申立人との離婚ならびに相手方宅に保管中の申立人所有物件の返還に同意しており、立会医師山田豊の意見に徴し、相手方の上記意思表示は、その真意に基づくものであることが認められる。

次に申立人は相手方の実母よしえに対し、相手方の見舞金として五万円を贈与することとし既に内三万円の授受を了し、残金二万円は、昭和四〇年一〇月三日よしえ方に送金支払いする旨約束した。同相手方の実母は、申立人と相手方の離婚に異存がなく、同人方に保管中の別紙目録記載の申立人所有の物件全部を昭和四〇年九月一一日午前八時申立人に返還引渡す旨を約した。

以上のような経過の下において、当事者双方のため衡平に考慮するときは、双方の離婚および申立人所有物件の返還について審判をなすことが、双方の申立の趣旨に反しない限度で事件の解決のため相当な措置であると認められる。よつて、調停委員林敬雄、大西貞子の意見を聴き家事審判法第二四条を適用し、主文のとおり審判する。

(家事審判官 斉藤直次郎)

別紙<省略>

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